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これは重要!最大氷結晶生成帯の意味

 「氷温」を考える場合、冷凍のメカニズムをある程度知ることによって、解凍を含め、氷温の活用範囲は飛躍的に拡大するものである。また、食品を凍らせても品質が低下しない方法について、多くの研究者が様々な挑戦をくり返してきた。その基本的なものの一つであり、最重要課題でもある最大氷結晶生成帯について少し解説する。
 食品を凍らせる場合、0℃以下の氷結点に到着するまでは速やかに品温は降下するが、それ以降-1℃~-5℃までの品温の低下は極めて緩やかになる。これは、冷却の大部分が氷結潜熱(水kg当たり80Kcal)を除くために使われるためであり、この温度帯は最大氷結晶生成帯と呼ばれている。しかも、現在の冷凍技術は、この最大氷結晶生成帯を早く通過させることを基本としているが、それはなぜか?
 水が氷になるときは、約9%の体積が膨張する。食品は脆弱な細胞組織からできていることが多いので、細胞内部の水が凍ると氷結晶によって細胞膜などの細胞組織は体積膨張により物理的な損傷を受ける。また、食品冷凍の初期には、細胞外液が氷になっても、細胞内液が水のまま存在する期間がある。氷の蒸気圧は水の蒸気圧により小さいので、細胞内の水は細胞膜を通して細胞外に逃げ出し、そこで細胞外にできている氷に凝着し分離するが、これも食品の損傷の一原因である。さらに食品の体液は、タンパク質や糖類が非常に多くの水分子を結合したコロイド溶液である。このコロイド溶液を凍結すると、タンパク質や糖類に結合してしている水分子が氷結晶となって析出し、コロイド粒子の水和層を破壊してしまう。魚肉タンパク質では、このときタンパク質変性が起こり元に戻れなくなってしまう。この凍結傷害は最大氷結晶生成帯で著しいのである。実際の冷凍食品の生産では、この最大氷結晶生成帯を早く通過させる急速凍結に努めることになる。これによって、生産力が高まるだけでなく、品質も高く保持されるのである。
 この冷凍の基本概念を構築し、普及させたのはクラ―レス・バーズアイ(アメリカ)である。バーズアイは1919年から3年間、北極に近いカナダのラップランドに暮らしたとき、現地人が-40℃の自然の中でトナカイの肉を冷凍貯蔵していることを見いだした。彼はここで温度を下げれば下げるほど保存性が高まり、また、早く凍らせればさらに効果的である冷凍食品の基本的なアイデアを得たのである。この後、彼はアメリカにて魚の冷凍会社(後に有名なゼネラルフーズ社)を起こし、冷凍食品の販売を開始した。






 
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